ケース15:エントロピー

 

 

熱力学の第一法則と第二法則について説明します。

第一法則は、別名「エネルギー保存の法則」とも呼ばれています。熱も仕事もエネルギーのひとつの形態と言うことができるのですが、「熱の持っていたエネルギー以上の仕事をすることができない」というのが、それです。

つまり、石油を燃やしてその熱で蒸気を発生させ、それで電気を起こして、その電気で機械を動かせたとしますね。そのとき、最初に発生した熱のエネルギー以上の仕事を機械にさせることは出来ないというわけです。

反対に仕事が熱に変わることもあるのですよ。ボールを転がすと、途中で止まりますよね。そのとき、ボールが転がっているときの仕事のエネルギーはどこへ行ってしまったのでしょうか。はい、それは摩擦と言う熱に変わったと言うわけです。

(ブルブル・・いけない。かなり真剣におトイレに行きたくなってきたわ。あと五分で休み時間。いくらなんでも、それまでは我慢できると思うけど。今日は珍しく短いスカート。お尻が冷えたのかしら。)

熱力学の第二法則は「熱は自然に高温から低温に流れるけれど、その逆はない」と言うことです。例えば、お風呂のお湯は放っておいたら冷めますよね。これは熱が空気中に流れていったのです。また、お湯と水を境のある水槽に入れて、間の境を取り去ると、温度が高いお湯が低い水と混ざって、全体がぬるま湯になりますよね。そんなことです。

これは「エントロピー増大の法則」ともいえます。皆さん、エントロピーってわかりますか。物質には分子レベルで見るミクロの状態と、物質そのものとして見る、これをマクロの状態と言うんですけど、ミクロとマクロ、ふたつの観点があります。あるマクロの状態に対して、その状態を実現できるミクロの数が多いほど、エントロピーが高いと言えます。

(やっとベルが鳴ったわ。ここで切り上げて、急いでおトイレにいかなくちゃ。)

お湯と水が交わっている状態、この状態は確率的に低い状態ですので、エントロピーは低いと言えますね。それが混ざってぬるま湯になると、エントロピーは高くなります。このように、物体は放っておくと、どんどんエントロピーの高い状態になろうとする。従って、第二法則は「エントロピー増大の法則」とも言い換えることができるのです。

ベルも鳴りましたので、あの、十分間の休憩を、取ります。

(ああ、これでやっと解放される。やっとおトイレにいけるわ。)

はい、何ですか。君は確か、土田君でしたね。どうしたんですか。質問ですか。えっ、もちろん、いいですよ。「どうして、お湯がエントロピーの低い状態で、水がエントロピーの高い状態ですか、その逆じゃないか」って言うのですね。

(もう、普段は全然質問なんかしてこないくせに。こんなときに限って質問に来るんだから。)

あの、君はそれエネルギー、つまり、熱、つまり分子の活動とエントロピーをごっちゃにしてますね。エントロピーは、熱、分子の活動とは全然関係ないんです。自然界において、起こりえる確率が少ないこと、それを、エントロピーが低いって言うんです。それに、エントロピーなんて、大学の入試には出ないから、忘れてもいいのよ。

えっ、「お湯は水より、どうして起こりえる確率が少ないのか」って。

(この子、土田、馬鹿じゃないの。どうして、そんなつまらない質問するの。もう、エントロピーなんて、言い出すんじゃなかったわ。マジに、今おトイレに向わなければ、やばい。)

だって、そうでしょう。水は、そう、水はどこにでもあるけれど、お湯は沸かさなければならないでしょ。

ええっ、「氷と水はどちらのエントロピーが高いのですか」って。それは。

(どっちかしら。そんなの、知らないわよ。どうでもいいじゃない。お願い、もう行って。)

ごめんなさい。ちょっと、わたし、先生、今急いで行かなければならないの。休み時間が終わったら、きみの質問にお答えするから。ううっ。辛い。

「先生は学生の質問を受けるのが辛いのか」って。違います。そんな意味じゃなくて。別のことで辛いの。

(何よ、このベルは。もう休み時間が終わったの。学生たちが教室に戻ってくるわ。これってわたしをトイレに行かせない陰謀なの。)

ごめんなさい。すぐに戻ってきますから。

(ひいー。入ってくる学生で、教室から出られない。ああっ。今、少し、漏れた。もうだめ、垂れちゃう。いやー。)

ごめんなさーい。先生を、先生を先に出して。お願いっ。

(あああっ。また少し漏れた。これ以上漏らしたら見つかる。ハンカチ。やだ、持ってこなかった。職員室だわ。正直。限界。)

 

あああああっ。出てしまった。おしっこがどんどんパンティの中へ。もう止まらないよう。

やってしまった。予備校の講師が。教室の中で。お漏らし。二十七歳の、予備校では若くて男子学生に人気があるので有名なこのわたしが、彼らの目の前で、失禁。おしっこ垂れ。

暖かいオシッコが、ミニスカートの間から、ブーツに流れ込んでいく。皆がわたしを見ているだろう。だから顔を上げるのが怖い。破滅。

どうして、知ったかぶりしてエントロピーなんていい始めたのかしら。

終わった。おしっこで焼けるように熱かったお尻や足が急速に冷え込んでいくは。この状態、エントロピーで言うと、なんて言うのかしら。

 

 

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