ラジオ体操

飯田晃代は、XX女子大学教育学部の二年生。陸上部に所属、百メートルハードルと走り幅跳びの選手だ。XX女子大陸上部は毎年八月後半の一週間、夏合宿を行っている。今年も宿泊施設とトラックのあるS県青少年公園で、部員三十七名が参加して、合宿練習が行われた。
第一日目の午後、練習を終えた後、主将で槍投げ選手の岡谷朋子と主務の和歌森素子が、全員を陸上トラックの中のフィールドに集めた。主務の素子が、合宿中の時間割について説明をする。
「練習は、午前六時半からの朝練習。八時の朝食の後、十時半からの午前の練習、昼食は十二時半から。三時半からの午後の練習。夕食は六時半からです。夕食後はマッサージとストレッチングの後、自由時間です。就寝は十時。以上ですが、質問は。」
「合宿中は、時間厳守だからね。皆、心して行動してください。」
主将の朋子が付け加える。朋子は更に続ける。
「朝練習の時間に遅れた人には、ちょっとした罰ゲームを考えています。遅刻した人は・・・」
皆の好奇心に満ちた目が朋子集まる。
「・・・夕食後、皆の前でラジオ体操をしてもらいます。Tバックの水着で。」
「きゃあ。」
何人かの遅刻の常習犯の部員から悲鳴が上がった。
翌朝、お腹の調子が良くなかった晃代は、トイレへ行っていて、六時半の集合時間に少し遅れてしまった。晃代が遅れてジョギングの列に入っていくと、主将の朋子がニヤリとして言った。
「アキちゃん、遅刻よ。分かってるわね。ラジオ体操。」
「はい。」
晃代はその時、まだそれが普通のラジオ体操だと思っていた。
その日の夕食もほぼ終わろうとする頃、主務の素子が晃代のテーブルにやってきた。素子は晃代に紙袋を渡す。
「アキちゃん。この後、約束の罰ゲームやるわよ、これ、それの『ユニフォーム』だから。着替えてきて。」
「先輩、本当にやるんですか。」
「当たり前じゃない。」
晃代はトイレへ行き、個室に入り鍵を掛けた。そして、その紙袋の中の物を取り出し、眼の前に広げた。水色のビキニ。ブラジャーの方は普通だが、ショーツの方は後ろが完全に一本の細い紐になっている。
晃代は着ているものを全部脱ぎ、水色の水着を身に着けてみた。ブラジャーはピッタリだ。ショーツの股の部分が思っていたより細い。そして、三角形の布の部分は、予想していたより丈が短く、随分前の方でもう紐になっている。毛の生えている辺りは何とか布で覆われるが、お尻の穴のある辺りはもう完全に細い紐の領域だ。
晃代は自分のハマグリの二枚貝に似た部分を丹念に水着の中に畳み込んだ。
幸い晃代はそれほど毛深くない。何とか毛とハマグリの部分は、水着の中に納まった。晃代は脱いだ下着を紙袋に入れ、水着の上にTシャツとショートパンツを着て、トイレを出た。
晃代が食堂に戻ると、他のグループはもう出て行った後、彼女の大学だけが残っていた。そして、部員たちは、食堂の空いたスペースに、試合前に円陣を組むように輪になっていた。晃代はその真ん中へと押し出される。
「では、始めてもらうわよ。」
朋子が言った。晃代は変な物がはみ出さないように注意しながら、慎重にショートパンツとTシャツを脱ぐ。そして、もう一度股の部分を確認する。
「大丈夫、大事な部分はちゃんと隠れているわ。」
晃代は自分に言い聞かせる。部員から声がかかる。
「先輩、素敵よ。」
「アキちゃん、格好良いよ。」
「可愛いお尻。」
晃代は自分のお尻が人目に晒されているのに改めて気付き、慌てて両手を当てた。
主務の素子がスピーカーにつないだIポッドを操作している。「ラジオ体操第一」の前奏が流れる。
「言っとくけど、終わるまで水着に触れちゃダメよ。」
と主将の朋子が言う。
「NHK〜、ラジオ体操第一〜、用意〜、腕を大きく上げて背伸びの運動〜」
聞き慣れた掛け声が響く。
最初の動作、晃代にとっても、Tバックの水着にとっても、それほどやばいものはない。
「手足を大きく振って、足もしっかり曲げ伸ばし〜」
足を開く動作は避けたいところだけど、この程度なら大丈夫だと晃代は思う。
「腕を大きく回しましょう〜」
「胸の運動、足を広げて胸を大きく開いて〜」
この辺りからだんだんとやばくなってくる。
「ほら、ちゃんと足を開いて。」
朋子の声が飛ぶ。思い切って足を開く。
「腕を左右にねじって、大きく大きく〜」
「身体を大きく回します。脇もぐっと伸ばして〜」
股の部分で何かがずれた感じがした。何が起こったかを確認しようとする晃代。
「アキ、下を見るんじゃない。ちゃんと胸を張って前を見て。」
と朋子。晃代は体操を続ける。
音楽が終った。晃代は自分の下半身に目をやり、
「ギャッ」
と叫ぶ。水着の股の部分は完全に横にずれていて、大陰唇と陰毛が剥き出しになっていた。晃代は慌てて、それらを水着の中に押し込む。部員の間からは拍手が起った。
「アキちゃん、良かったわよ。」
「先輩のお尻の穴って小さくて可愛い。」
「あんた、あそこまだピンクなんだね。うらやましい。」
晃代は真っ赤になりながら、ショートパンツを履いて、Tシャツを着た。
「さあて、明日は誰かしら。」
と素子が皆を見回しながら言った。
「いやだあ。」
「素子さん、あなたかもよ。」
部員たちは口々に叫んでいる。
しかし、翌日も、翌々日も、該当者はいなかった。結局、合宿中で罰ゲームを課されたのは晃代だけだった。
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「ラジオ体操第四」というのがあるのをご存知だろうか。知らない方は、是非YouTubeでご覧いただきたい。これは笑える。NHKの放つ、最高のジョークだと筆者は思っている。
